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科学班の恋【D.Gray-man】

第61章 弱い心と強い心



「わたしはいるよ」



見栄とか、変なプライドとかじゃない。
ただ純粋に、傷付けたくないと真っ直ぐに思える人。
そういう人が、私にはいるから。



「………」



お互いの間でできる沈黙。
真っ直ぐに逸らさず見た神田の目は、同じように逸らされることのないまま。



「…ったく」



先に沈黙を破ったのは神田だった。



「本当に面倒な奴」



深々と溜息をついて、六幻を鞘に戻す。



「なら好きに強がっとけ」

「……うん」



まるで見捨てるような物言いに、少しだけ胸は痛んだけど…これは譲れないから。
俯きがちに頷く。



「その代わり、俺には強がるんじゃねぇよ」



……うん?



「え?」



予想もしなかった言葉に、思わず顔が上がる。
其処には未だ顔を顰めたままの神田がいた。



「下手クソな強がりなんざ見てると、苛々すんだよ。餓鬼が一端に強がりやがって」

「……わたし、こどもじゃないけど」

「今はどっからどう見ても餓鬼だろ」



それは見た目だけです、中身は大人です。



「お前は大人だって思ってても、事情を知らない奴にとって今のお前は単なる餓鬼なんだよ。自覚しとけ」



溜息混じりに言われた言葉に、否定の言葉は出せなかった。

…確かに神田の言う通り。
どんなに心は大人でも、今の私はひ弱な子供。
超人であるノアじゃなくたって、日頃から鍛えてるエクソシストじゃなくたって。
普通の人の前でも、きっと今の私は無力なんだ。



「………」



そう思うとまた、昨日感じてしまった不安がじわりと蘇ってきた。
思わず握った手の中で、僅かに汗が滲む。



「だから約束しろ」

「…やくそく?」



横にした六幻を握った手を僅かに持ち上げて、神田は私の前に、そのイノセンスを掲げた。



「任務中は俺の目の届く所にいろ」

「え?」

「それが守れるなら、俺も約束してやる」

「やくそくって、なにを…」



その目は真っ直ぐに私を捉えたまま。






「誰もお前に触れさせない」






静かに、でも確かに凛とした声で神田はそう告げた。

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