第61章 弱い心と強い心
───朝。
「………」
時間を確認すればまだ起きるには早い時間帯。
でも体は寝付けず、もぞもぞと布団の中から体を起こした。
…というかほとんど眠れなかった。
………安心できなくて。
「…ねむ…」
明らかに寝不足で重い瞼を擦りながら、恐る恐るカーテンの隙間から顔を覗かせる。
まだ朝と言うには少し早い時間帯。
薄暗い部屋の中は、窓から差し込む微弱な光でどうにか確認できる程だった。
…あれ。
てっきり皆ベッドで寝てるかと思ってたのに。
ベッドを使ってたのはジジさんだけで、リーバー班長は備え付けの椅子に座ったまま寝ていた。
あれ、体痛まないかな…。
「寝れたのか」
「え?」
ぼそりと低い声が近くから届いた。
見れば、私のベッドの端に背中を凭れて座り込んでいる神田がいた。
神田はこんな所で寝てたんだ。
…ベッド、使えばいいのに。
「うん、まぁ…」
意外に近くにいて内心驚きながら返せば、座ったままその黒い目が私を見た。
その目に私を映すと、僅かに眉が寄る。
「寝てねぇだろ、お前」
「…え」
なんでわかったんだろう。
…そんなに酷い顔してるのかな。
寝起きだから、綺麗な顔はしてないとは思うけど…。
思わず顔に手を当てる私に神田は眉を寄せたままだったけど、それ以上何も言わなかった。
…そういえば。
色々あり過ぎてすっかり忘れてたけど…六幻、大丈夫なのかな。
「かんだ…むげん、みせてもらえる?」
ベッドから出て歩み寄る。
座り込んでいるから、目線の高さはいつもよりずっと近い。
あまり眠れなかったけど、時間が少しは心を落ち着かせたのか。
そんな神田に怖さは感じなかった。
「はそんしてたら、たいへんだから」
「壊れてねぇよ」
「でも…いちおう。わたしのせいで、つかわせちゃったし…」
「………」
言えば、嫌そうな顔をしたものの。
意外にも大人しく、六幻の刃を鞘から抜いて見せてくれた。
「オラ、平気だろ」
「…うん」
近くで見ながら、窓から差し込む薄暗い光で刃を確認する。
発動前の六幻は刃全体が塗り潰されたような真っ黒。
そこにヒビや傷は見当たらない。
よかった。