第61章 弱い心と強い心
「あの…すみません。すこしつかれちゃって…やすんでもいいですか?よるもおそいですし…」
一人にさせて下さい、なんて言えるはずもなく。
一人の空間に逃げることにした。
寝てしまえば、その間はあのノアのことも思い出さなくて済む。
「…そうか。わかった」
「南、このベッド使え」
「ありがとうございます」
本当は、何があったのかきちんと報告した方がいいんだろうけど。
…きっと班長も、それを気にしてるとは思うけど。
今の私を気遣ってくれてるんだろう、すんなりと意見を通してくれた。
頭を下げて、ジジさんに促されたベッドに入る。
仕切りのカーテンを閉めてしまえば、ある意味私だけの空間になるけど。
「………」
その薄いカーテン一枚越しにいる気配に、心は落ち着かなかった。
これが女性だったら、そうはならなかったかもしれない。
でも班長も神田もジジさんも、皆男性で。
今の私は、普段以上に無力な幼い子供で。
わかってるのに。
そんなことしないって、そんなの当たり前のことなのに。
なのに心はざわざわと落ち着かないまま、逃げるように私は布団の奥に潜り込んだ。
「…っ」
一人になりたい。
本当に、誰もいない場所に行きたい。
誰にも触れられない場所に。
じゃなきゃ心底安心できない自分が、其処にいた。