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科学班の恋【D.Gray-man】

第61章 弱い心と強い心



シャワー室から上がると、脱衣所には破かれたチャイナ服も班長のコートもどこにもなかった。
多分神田が持っていったんだろう。
用意されていた代えの服に身を包んで、脱衣所を出る。



「お…っ」



声を上げたのはジジさんだった。
半ばベッドから腰を浮かせて、こっちに来たそうにしているのに体は動かない。
その顔はどこか心配そうにこっちを見て…ああ。
多分、大まかにでも状況は理解したんだろうな。
班長達に教えてもらったのか、あの破けたチャイナ服を見て悟ったのか。



「?」



ふっと、視界の横を黒い何かが動く。
視線を向ければ、脱衣所の横の壁に背を付けて立っていた神田が離れていくのが見えた。



「南。何度も聞いて悪いが…体は大丈夫か?痛むところとかないか」



そっと歩み寄ってきたリーバー班長が、屈んで私と同じ高さに視線を変える。
膝を付いたその場所は、一人分だけ私から距離を置いていた。
…怖がらせないように、気を遣ってくれてるんだ。



「はい、だいじょうぶです」



痛むところなんてない。
それは本当だったから。
不安げな班長に頷いてはっきりと返せば、ほっとしたように班長は僅かに息をついた。

…きっとずっと心配させちゃってたんだろうな。

そう思うと、申し訳なさで胸が痛む。
そんな気遣いをさせることにも申し訳なさを感じて。



…一人になりたい。



そう強く思った。
こんな弱い自分を見られたくないし、気遣わせるのが申し訳なくて。

…自分に余裕がないのも、理由にあった。
もしまた泣いてしまったら、余計な心配をかけてしまう。

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