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科学班の恋【D.Gray-man】

第61章 弱い心と強い心



狭い一人用の脱衣所で、結ばれた袖を解いてコートを脱ぐ。
チャイナ服も脱ぐと、改めてその悲惨さが目に映った。
大きく肩から破かれたチャイナ服は、もう服として機能していない。

…これは酷い。
班長が顔を顰めたのも納得してしまう。
というかあの変態ロリコンノア、本当に容赦ないな…。



「はぁ…」



思わず溜息をつく。
精神的ダメージを受けはしたけど、身体的ダメージは然程ない。
未遂で終わってるし。
この任務が終わるまでには多分、心も回復してるだろう。
そう思いながら電気を付けたシャワー室に入って。



「───」



鏡に映った自分に、思わず目を見開いた。



其処に映っているのは幼い自分。
どう見ても子供の未熟な体なのに。

首筋や胸元に無数に散らばった赤い印。
幼い体に強く主張してくるそれ。



そのアンバランスさが、とてつもなく奇妙で異様に見えた。



「──っ」



ゾクリと背筋が凍る。

未遂だったけど。
あの心臓を内側から撫でられる感触は、嫌という程覚えてる。
抗えない相手に、好きに体を弄ばれる恐怖。
その言いようのない悪寒が、一気に私を襲った。



「…は…っ」



体を抱きしめる。
カタカタと小さな震えが全身を包む。

たったあれだけのことで、こんなに恐怖を植え付けられるなんて。
そんな自分が情けなくて、同時に弱い自分をありありと突き付けられた。

ラビの時はここまで恐怖を引き摺ったりなんかしなかったのに。
…きっとそれはラビだったからなんだ。

他人から無理矢理押し付けられる行為が、ここまで怖いものだったなんて。



どんなに心で足掻いても、力で押し潰される現実。



特別力も何もない、私はただの人間だから。
せめて心は強くありたいのに。
全然駄目だ。






"私はただの人間だから。体でラビ達を守ることはできないから…せめて心で、守りたいって思うんだよ"






あんなに偉そうなことをラビに言った癖に。
自分の心でさえも守れないなんて。



「ぅ…ッ」



情けない。



「っ…ふ、…く」



情けなくて情けなくて。
堪えきれず、ぼろりと涙が零れた。

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