第60章 隠れんぼ
「そのゴーレム…」
「…ああ、ジジに頼んで作って貰ったんだ。探知機能だけ変えて、南が貰ったって言ってたキャンディの匂いを追ってもらった」
成程。
ノアの言う通り、ゴーレムは私に染み付いた甘い匂いに反応してたんだ。
というかそんな特定の匂いにだけ反応するゴーレムを、この短時間で造り上げるなんて。
性格は一癖も二癖もあるけど、仕事となるとジジさんの腕は凄い。
「だーッ!誤作動起こしてんじゃねぇよッ!」
顔面に張り付くゴーレムを、荒々しくジジさんが引き剥がす。
だけどゴーレムはけたたましく鳴いたまま、構わずまたジジさんに突進していた。
…うん。
私が見つかる前に、誤作動起こさなくてよかった。
「ほら、南ちゃんは返したし。攻撃やめてくれるっ?」
「阿呆なことぬかしてんじゃねぇよ!」
ギィン!と鉄が擦り合うような激しい打撃音が、幾つも響く。
それはノアの腕に纏った大きな蝶々のような代物と、神田の六幻がぶつかり合う音。
見ていてついハラハラしてしまう。
六幻、壊れなきゃいいけど…っ
「神田!そいつは任せていいか!この狭い室内じゃ、俺らまで巻き添え喰らっちまう…!」
「さっさと行け」
ジジさんの言葉に、ノアを睨み付けたまま神田が手短に返す。
その肯定の言葉にジジさんは私を抱えたまま、瓦礫の向こうに飛び出した。
「ッ待て…!」
止めたのはリーバー班長だった。
「んあ?なんだよリーバー、こんな時に…っ」
「………」
ジジさんの肩を掴んで止めたその顔は、どことなく険しい。
なんだろう。
「早く逃げねぇと…っ」
「…南を放せ」
…え?
「何言ってんだ?それより逃げねぇと、俺らも巻き添え喰らっちまうぞッ」
「逃げるんじゃなくて、南を連れてく気だろ」
「リーバーはんちょう…?」
何を言ってるんだろう。
急な班長の言葉に、意味がわからず困惑する。