第60章 隠れんぼ
「テメェ…そいつに何しやがった」
低い神田の声が、殺気を含む。
「ちょっとね。一緒に遊んでただけだよ」
「ほざけ」
「ホントだって。大人の遊びだから、未成年は観覧禁止な?」
にっこりと神田に向かって笑うノアのその言葉が、まるで合図だったかのように。
ギィンッ!
飛び出した神田の六幻の刃が唸りを上げた。
「うわ速っ」
「そいつを返せ!」
六幻の攻撃を受け止めているのは、ノアの腕に纏う大きな蝶々のような代物だった。
いつの間にそんなもの、どこから出したのか。
私を腕に抱いたまま対峙するノアは、片手しか使えない。
そのハンデもあってか、休みなく繰り出される神田の攻撃を受けるだけで精一杯のようだった。
「っ…悪いな南ちゃん」
「わ…っ!?」
そうぼそりと呟いたかと思えば、ノアが抱えていた私の体を放る。
突如放り出された私の体は、簡単に宙を舞った。
「っと…!」
ドサリと抱きとめてくれたのはジジさん。
「大丈夫か南っ」
「は、はい…ありがとうございます…」
やっとノアから解放されて、思わず安堵の息をつく。
見上げたジジさんも私を見下ろして、ほっと笑った。
「南…っ!」
そこに駆け寄ってきたのはリーバー班長。
急いでコートを脱ぐと、すっぽりとそれで私の体を包んでくれた。
「大丈夫か…って、大丈夫じゃねぇよな…くそッ」
「…はんちょう…」
顔を歪めて、ぎゅっとコートを握る班長の手に力が入る。
その言葉はまるで、自分自身を詰っているかのようにも見えた。
「わ…わたしは、だいじょう───」
「イテテ!」
『ピーピー!!』
咄嗟に大丈夫だと伝えようとすれば、私を抱いていたジジさんが喚く。
見れば、その顔面に勢いよく突進するあの小型のゴーレムがいた。
あ。