第60章 隠れんぼ
何がどうして、AKUMAの姿が見えるようになったのか。
神田の攻撃のお陰なら、私もそれで皆に見えるように───…って待って。
そんな攻撃受けたら、私死にます。
「ったく。ロードの奴、遊んでるな…」
ぼそりと溜息混じりに呟いたノアの言葉が、微かに耳に届く。
遊んでるって…ロードが近くにいるの?
慌てて辺りを見渡してみるけれど、それらしい姿は見えない。
「なんか雲行き怪しくなってきたし。場所変えようか」
「わ…ッ」
腰を上げながら、ノアの腕が軽々と私の体を抱き上げる。
慌てて暴れてみるけれど、その腕から抜け出すことはできない。
「そんなの、ひとりでいったら!」
「つれないこと言うなよ」
「だいたい、ロードのあそびにつきあうきはないって、いってたでしょ…!」
「うんだから、俺と一緒に退散しよ?」
ジタバタもがく私の体を涼しい顔で抱えたまま、ノアの足が崩れた瓦礫へと向く。
一歩踏み出せば、目の前にはキラリと光る刃が───…刃?
「お?」
思わず足を止めたノアが、その刃を見て目を丸くする。
チャキ、と構えられたその刃は迷いなくノアの顔に突き付けられていた。
「微かだが、匂いはする。あの胸糞悪い甘ったるさだ」
そう吐き捨てる、神田の手によって。
いつの間に倒していたのか。
神田の背後には、その刃にざっくりと切り裂かれて動かないAKUMAの残骸。
「三幻式、」
小さな声で神田が囁く。
その言葉に反応するかのように、鈍く光る六幻の刃。
ゆらりと刃を纏う光は、界蟲の時より濃く。
「やべ…っ」
「ま、待て神田…!」
焦ったように漏らすノアとリーバー班長の声が、ほぼ同時に重なった時。
「"爆魄斬"!!」
大きく振るわれた神田の六幻から、閃光のような衝撃波が放たれた。
「うおッ!?」
咄嗟に飛び退くノアの体を、眩い程の閃光が襲う。
だけどそれはノアの体に触れる前に、バチバチと電撃のような音を発して。
ドォンッ!!
凄まじい爆発を起こした。