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科学班の恋【D.Gray-man】

第60章 隠れんぼ



「驚いた。ただの人間にそんな探知能力、ある訳ないのに」



感心したようにノアが呟く。



「第六感みたいなもんか」

「…はんちょう…」



でも、はっきりと私に気付いてくれた訳じゃない。



「はんちょう、わたし…ここにいます…ッ」



コートを握る手に力を込める。



「きづいて、おねがい」



切実に呼びかける。
するとコートを握った手の上に、そっと手が重なった。



「まぁ、偶然だろうけど」



…褐色の、ノアの手が。



「そんな泣きそうな顔するなよ。虐めたくなるから」



見上げた先には、どこか困ったように笑う顔があった。
でも口にすることは、相変わらず悪寒を走らせるものばかり。



「…なんでそんなに、わたしにかまうの。エクソシストでもないのに」



教団で働いていても、私はノアが目を止めるような存在じゃない。
特別な力も何もない、ただの人間なのに。



「俺別にエクソシストに固執なんてしてねぇよ?寧ろ興味あるのは、南ちゃんみたいな普通の人間だから」



時折見せる狂気的な顔は、悪役そのものなのに。
時折見せるこういう顔は、どことなく人間らしい。

ノアなんて括りがなければ、まだわかり合える余地があったかもしれないのに。

……いや、やっぱり無理かも。
変態ロリコン残念男なんて。






「リーバーッ!」






そこに慌しく新たな声が飛び込んでくる。



「南は見つかったかっ!?」

「ジジ…いや、まだだ。それよりお前、部屋で待機してろって言っただろ」

「馬鹿野郎、南のことを考えるとじっとしてられねぇよッ」



それはリーバー班長と同じように、必死になって捜してくれているジジさんだった。
眼鏡の奥の目が班長を捉えて、それから傍にある小さなゴーレムに目を向けて…あ。
今、一瞬目が合った気がしたけど。
その目は偶然私と重なっただけのようで、再び逸らされた。

…やっぱり、私は見えていない。

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