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科学班の恋【D.Gray-man】

第58章 ゲームルール



神田の言葉を否定しながら、俺達と"同じ"だと言う。
その姿は、どう見ても同じ人間には思えなかった。
だがAKUMAなら、神田の六幻の攻撃が効かないはずはない。

本当にこの少女は何者なのか。



「キミ達と遊ぶのも楽しそうだけど、南と遊んでる途中だから。やっぱり今度にしよっか」



小さな足で、迷いなく後方に少女が下がる。
胸に突き刺さったままの六幻が、それによってズブズブと抜けていく。
それでも悲鳴なんて一つも上げず、痛みに耐える顔なんて一つも見せず。



「あのコとの遊びが終わったら、キミ達とも遊んであげる」



ふわ、と鼻を掠める甘い匂い。
レストランで神田がそう口にした時も、確かに僅かにそんな匂いがした。



「じゃあね~」

「ま、待て…ッ!」

「チィッ!」



すぅっと、まるで闇に溶けるように目の前の少女の体が消えていく。
荒々しく舌打ちした神田が、目にも止まらぬ速さで再度六幻を振るう。



ヒュオッ!



しかしそれは空を切る音を奏でただけで、もう其処に少女の姿はなかった。
まるで最初から其処にはなかったかのように、忽然と消えた。



ただ、あの甘い人工的な匂いだけ残して。



「……なんだったんだ…」

「なんであれ、あの餓鬼が関与してるのは明白だろ。胸糞悪い匂いがした」



六幻を鞘に戻しながら、レストランで見せた時と同じ顔で神田が吐き捨てる。



「あの飴の匂いだ」



飴?
それはもしや、消えた少女が持っていた子供用のキャンディのことか。



「…そういえば、」






"さっきそこで13さいくらいの、おんなのこからもらったんです"






昼間。
同じキャンディを手にして、そう言っていた南を思い出す。
南が口にした少女と、今消えた少女はきっと同一人物。
そう確信すると共に、不安は一気に膨らんだ。
AKUMAじゃないにしても、明らかにただの人間じゃない。
ゲームオーバーは"死"だとあの少女は言った。



…まずい。

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