第58章 ゲームルール
「早く南を見つけないと、命が危ないかもしれない…っ」
「だとしても手掛かりがねぇんだ。どうやって見つけるんだよ」
大方、捜せる所は捜した。
なのに南の目撃情報はなに一つない。
何かないか、何か。
南の手掛かりになるようなもの…っ
必死に今日一日の南の姿を振り返る。
レストランで少女のことを口にしていた南。
どことなく不安そうに、話をしていた。
船のプールでジジに遊ばれていた南。
フリルの付いた水着姿は、簡単には直視できなくて───…って今はそんなこと考えてる時じゃないだろ俺!
"さっきそこで13さいくらいの、おんなのこからもらったんです"
「───そうだ、」
再度、思い出す。
あの少女と同じ縞々のキャンディを手に、苦笑していた南の姿。
少女が消えた今も、それは僅かに残っている。
人工的な甘い匂い。
神田の言う通り、これがあのキャンディの匂いなら…同じ物を貰った南にも、その匂いは染み付いているかもしれない。
「南も持ってたあのキャンディの匂いを辿れば、南を捜し出せるかもしれない」
「匂いを辿るって…このだだっ広い船の中で、どう辿るんだよ。犬じゃねぇんだぞ」
訝しげな顔をする神田の言うことは最もだった。
果たしてその匂いが南に染み付いているかどうかも、定かじゃない。
でも、そんな僅かな可能性でも。
「少し待ってろ。おい、ジジっ」
『───…おう。こちらジジ。南は見つかったか?』
「まだだ。それより今すぐそっちに戻るから、頼みたいことがあるんだ。いいか」
『頼みたいこと?』
急いで無線先のジジと連絡を取る。
その可能性は僅かなものだったが、他に良い案なんて思いつかない。
藁にも縋る思いで、それに頼るほかなかった。
頼むから、俺が見つけるまでどうか無事でいてくれ。
南。