第58章 ゲームルール
クスクスと笑い声に混じる不気味な歌。
甲高い子供の声でメロディーを刻む。
その声に誘われるまま足を進めると、暗い甲板の端。
「せんねんこぉは、さがしてるぅ~♪」
甲板の柵に座り、真っ暗な海に向かって歌う子供の姿があった。
「だいじなハートぉ、さがしてるぅ~♪」
ぶらぶらと足を揺らしながら、落ちそうな柵の上に座っても微動だにしていない。
楽しそうに笑って歌う、女の子。
その手には大きな水色と白の棒付きキャンディが握られていて、美味しそうに口にしていた。
あの縞々のキャンディは見覚えがある。
「あなたはハズレぇ、つぎは───」
「ちょっといいかな」
小さな背中に、呼びかけてみる。
「………」
ぴたりと止まる歌声。
「…なぁに?」
ゆっくりと振り返ったその顔は、愛嬌のある顔立ち。
見た目は13、4歳程度の、短髪黒髪の少女。
「人を捜してるんだ。君、見なかったか?6歳くらいの、チャイナ服を着た女の子なんだが…」
ぱっちりとしたツリ目で笑いかけてくるその少女は、見た目は至って普通の女の子。
なのにどこか、子供らしかぬ雰囲気を纏っていた。
「知ってるよぉ。そのコ、南っていうコでしょ?」
恐る恐る問いかけてみれば、呆気なく頷く姿に驚いた。
思わず駆け寄る。
「もしかして君が南が友達になったっていう…っ」
「うん。ボク、南とお友達になったの。だから一緒に遊んでるんだよ」
「そう、なのか?」
思わずほっとして、肩の力が抜ける。
南は急に消えたんじゃなく、この子の遊びに付き合っていたのか。
「今、面白いところだから。邪魔しちゃダメだよ~」
ぶらぶらと足を揺らしてそう楽しそうに告げてくる女の子は、此処に一人。
近くに南の姿はない。
「面白いって…なんの遊びしてるんだ?」
「鬼ごっこと、隠れんぼ」
なんとも子供らしい遊びだな。
南の姿が見当たらないのは、隠れんぼで何処かに隠れていたからなのか。
…なんだ、よかった。