• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第57章 鬼ごっこ



嘘。



「ぁ…AKUMAっ!?」

「そこは俺、人間だから。安心してくれていいよ」



思わず後退る。
そんな私に、落ち着いた態度で軽く両手を挙げてみせる監視員さん。
その表情や喋り方は、初めて会った時とどことなく違うようにも見えた。



「じゃあなんで…っ」

「…そういう人間もいるってこと」



ぽりぽりと頬を指先で掻きながら、監視員さんが苦笑してみせる。
人間なのに、AKUMAと同じ"鬼"側だとこの人は言った。

〝ブローカー〟

その存在に咄嗟に浮かんだ名前は、それだった。



「遊びに付き合う気はなかったんだけど…巻き込まれちまったし。仕方ない」



"協力者"という意味であるその存在は、ある人物に加担していることからそう呼ばれている。
協力しているその相手は───…あの千年伯爵。



「南ちゃん、甘い匂いしてるし。しっかりマーキングされたな」



顔を屈めるように近付けて、その人がスンと匂いを嗅ぐ。
どうにも私にはわからないけど、その甘い匂いは体に染み付いているらしい。
一体、いつの間に。



「そんな甘い匂い漂わせてちゃ、食べて下さいって言ってるようなもんだから」






"子羊ハ、食ベテモイイッテ言ワレテルワ"






あのAKUMAと同じようなことを口にする監視員さんに、私の中で確信へと変わった。
この人は恐らくブローカー。
千年伯爵と取引する人間なんだ。
金銭と引き換えに、エクソシストの情報を与えたりAKUMAの材料となる人間を提供する、伯爵側の人間。
情報では知っていたけど、本当にそんな人間がいたなんて。



「っ!」



咄嗟に駆け出して部屋のドアに飛びつく。
精一杯手を伸ばして掴んだドアの取っ手は、ガチッと嫌な音を立てて止まった。
駄目だ、鍵が掛かってる。



「俺から逃げても、あのAKUMAに捕まってゲームオーバー。エクソシストがいても武器が使えないんじゃ、勝ち目はないよ」



後ろからかかる声。
焦る素振りなんて微塵も見せることなく、その人はゆっくりとこちらへ体を向けた。

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp