第57章 鬼ごっこ
「おにいさんも、ロードにまきこまれたりしたんですか?」
「ああ、いや…気付いたら何故か周りの人が俺を無視するようになってて」
じゃあ勝手に巻き込まれちゃったのかな。
「南ちゃんは知ってるのかな?さっきの生き物といい、この状況のこと」
「なんとなく…すこしだけなら」
早く班長達にこのことを伝えに行きたかったけど、同じ状況下のこのお兄さんを放っておく訳にもいかず。
あの生き物はAKUMAという悪性兵器であること。
自分が、そのAKUMAと関わりのある仕事をしていること。
この二つを、掻い摘んで話した。
一般人なら、オカルト染みてて簡単に信じてくれないかもしれないけど…
「はぁ…そんな小さな体で、どえらい仕事してたんだねー…」
まじまじと感心するように、監視員さんは溜息をついた。
そんな反応に少しだけ照れ臭くなる。
…だってこの人、見た目がどことなくラビに似てるから。
こうしてよく見れば、身長もラビと同様に高い。
「こんなすがただけど、わたしこどもじゃないんです」
「え?そなの?」
「じょうしのあくしつなくすりで、からだをちいさくさせられて…」
「そんな便利な薬あんのっ?」
便利じゃないです、私は色々と不便なんです。
「ふべんなだけですよ」
「そう?子供料金で公共の乗り物とか使えるし。色々便利だと思うけど」
「…それは、まぁ」
というかこんな状況下なのに、そんなお気楽思考ができるなんて。
…外見だけじゃなく、中身もどことなくラビに似てるかもしれない。
「それよりも、たぶん…まわりのひとがわたしたちにきづかないのも、AKUMAのしわざかもしれないです」
とにかく、この状況をどうにかしないと。
こうなれば、あのロードがAKUMAである可能性は高い。
様付けで他のAKUMAに呼ばれるくらいだし、きっとレベルも高いんだろう。
…やっぱり神田を捜さなきゃ。