第8章 真夜中の訪問
「物が散乱してる…」
「散乱じゃねぇさ。全部ちゃんと順番に並べてんの」
これが?
教団では一人一部屋与えられるけど、ラビとブックマンだけは同室で使用している。
その室内は足の踏み場を考えないといけない程、床にはあちこち新聞の束や書物が無造作に置かれていた。
一見散らかっているようにも見えるそれは、ラビにとっては整理してあるらしい。
何が何処にあるのか、頭に入っているんだろう。
迷うことなく一つ新聞を引っ張り出すと、机にあった分厚い書物と照らし合わせるように広げた。
「さて、と」
私もラビと同じに仕事しないと。
唯一寛げそうなベッドの上に腰を落ち着かせて、早速と作業に取り掛かる。
ゴーレムに機器を繋げて中のデータを確認。
あ、あったこれこれ。
「相変わらず仕事中毒さな。科学班は」
目的の映像データを繋げた機器に移していると、不意に声が掛かる。
見れば椅子に座って書物に目を通していたラビの目が、いつの間にかこちらに向いていた。
机に頬杖ついた姿で、感心するというよりも呆れた表情で私を見ている。
「ラビ達の身の危険を少しでも少なくする為に、日夜働いているんです。感謝して下さい」
「勿論でございます。日々日々、感謝致してます」
「よろしい」
ぴしりと背筋を正して言えば、わざとらしく深々と頭を下げられる。
そんなノリの良いラビの態度に、つい笑みが漏れた。
やっぱりラビとのこういう雰囲気は好きだなぁ。
変に気を遣わなくていいというか、自然体でいられる。