第8章 真夜中の訪問
「リーバー班長、なんだったんだろ…」
研究室を出ようとして引き止めてきた班長を思い返しながら、広い廊下を歩く。
深夜だからか人は全く見当たらない。
馬車だって余裕で通れる程の広く大きな廊下。
昼間はいつも沢山の人が行き交ってるのに、こうも人影がないと少し寂しくもなる。
教団内はその天幕や内装からして、全体的に重く暗いイメージだから仕方ないけど…。
足は自然と速くなり、ラビの部屋が見えてきた時には少し安心していた。
「ラビ。起きてる?」
電話した時は起きてたけど。
なんとなく控え目にノックして、ドア越しに声をかける。
部屋のドアが開くと、ラフな格好をしたラビが顔を覗かせた。
「…本当に来たさ」
まじまじと私の顔を見ての、第一声がそれ。
なんでしょう、来たら悪いんですか。
「行くって言ったんだから、当たり前でしょ。もう寝るとこ?」
「いや。ジジイに今夜中に記録しろって言われたから。あれ全部読まねぇと」
ちらりとラビの目が室内の机に向く。
其処には分厚い書物が幾つも置かれていた。
相変わらず本の虫状態というか…ある意味、私と同じで残業してる。
ブックマンの仕事も大変そう。
「ゴーレムだろ?それならここに───」
「映像を取り出すだけだから。少し借りられれば、いいよ」
「……じゃあ…入る?」
映像を取り出すための機器を取り出して見せる。
するとぽりぽりと赤い髪を掻きながら、ラビは体をずらして私を部屋へと招いた。
「ありがとう」
笑って頷けば、彼は肩を竦めて応えただけだった。