第56章 想いの形
「ドジっ子でミーハーですぐ泣くし。可愛い奴なんだよ」
「ふーん」
中身まで南とは違うみたいだ。
「南とは正反対なタイプだろ?」
それはジジも同じだったようで、カラカラと陽気に笑いながら付け足す。
「で、正反対なのになんで南が可愛いんだよ」
女性らしいその部下を愛でる気持ちはわかったが、南に対する気持ちがわからない。
「あいつは媚びるの下手だし、真顔で冷静に物事ツッコんでくるだろ。あの可愛げのない所が、可愛いんだよ」
「…支離滅裂だぞ、それ」
「わっかんねぇかなー。つい構いたくなるっていうか。そういう奴が偶に見せるデレとか、堪んねぇだろ」
「はいはい。どうでもいいけど変態親父みたいだからな、お前」
適当にジジの言葉を流して、もう一度ソーダで喉を潤す。
…確かにジジの言うことは納得できるかもしれない。
普通に喜怒哀楽はあるけど、なんせジジみたいに絡む奴が多い科学班連中な所為か、それをあしらう姿が南は多くて。
愛嬌という愛嬌を、周りに振りまくようなことはあまりしない。
だからといって素っ気無い奴かと言えば違う。
同期のジョニー達相手では、よく笑ってるし騒ぐのも嫌いじゃない奴だ。
…こうして考えると不思議な奴だよな。
南って。
だからなのか。
一言じゃ言い表せないその存在が、俺を惹き付けてやまないのは。
「でさ、リーバー」
「なんだ、まだ話続いて───」
「お前、南のこと好きだろ」
………。
「……は?」
「だから、お前。南のこと好いてんだろ?」
───!?
「おま…なん…急に…ッ!」
「おー。ソーダ零れてんぞー」
「っ!」
あまりの不意打ちな言葉に、一瞬思考が完全に停止した。
我に返って見れば、傾け過ぎたソーダが床を濡らしていた。