第54章 友達のお誘い
"テメェには関係ない"
初めて体が小さくなって、夜中の研究室で神田と出会った時。
同じように拒否された言葉を思い出す。
お昼の出来事の所為か、少し神田を身近に感じられていた。
二人きりでも、息が詰まるような雰囲気を感じなくなっていたのに。
その場に僅かに生まれたのは、それと同じ空気。
…あ、駄目だ。
これじゃあ、また逆戻り。
「かん」
「見つからねぇなら、もう戻るぞ」
どうにかその空気を失くしたくて声をかけようとすれば、神田ははっきりと否定の意を示した。
…ああ、駄目だ。
これじゃあ、何も言えない。
「…うん」
何をどう言葉にしたらいいのか。
神田のことをよく知らないから、何も出てこなくて頷くことしかできなかった。
「………」
甲板を去り行く神田の背中を見る。
振り返らないその姿勢は、まるで体で私を"拒絶"しているようで……少し、悲しくなった。
「クスクス」
思わず俯いた時、耳に届いた笑い声。
その高い声は、聞いたことのある声だった。
「そんな悲しい顔してたら、可愛いお顔が台無しだよ~」
思わず振り返る。
いつの間に、其処にいたのか。
「ねぇ、南」
暗い甲板の端。
器用に船の柵の上に座って、ぶらぶらと足を揺らす。
そんな笑うロードの姿が、其処にあった。