第54章 友達のお誘い
「───大人?」
「はい」
リーバー班長の問いに、こくんと頷く。
あの後、料理を運んできた皆にロードのことを話してみた。
見た目は普通の女の子だけど、その物言いは少し変わっていて、子供のようで、大人のよう。
そんなロードの醸し出す雰囲気を、中々上手くは伝えられなかった。
「子供の方が変な概念に捉われない分、敏感に物事を察知できたりするからな。南の口調に、大人っぽいって思ったんじゃねぇの?」
向かいでリゾットを口に運びながら言うジジさんの言葉は、確かに一理ある。
自分の感性に素直な子供だから、大人じゃ気付けないことに目を止められることもある。
「まぁ、あまり深く考えるなよ。悪いと思ったんなら、後で謝りに行けばいい」
考え込む私に、励ますように班長がぽんと軽く背中を叩く。
「折角の友達だもんな」
「……はい」
年齢は違うけど、友達だと笑ったロードは純粋に喜んでいるように見えた。
…うん、後で謝りに行こう。
子供は此処では珍しいから、捜せばすぐ見つかるかも。
顔を上げて頷けば、班長も笑ってくれた。
「つーか、甘ったるい」
そこに不意に響く、低い声。
見れば、私の隣の席で中華そばを食べていた神田が眉間に皺を寄せていた。
甘い?
「デザートなら、もうたべたよ」
ジジさんが取ってきてくれたスイーツケーキは、既に私のお腹の中。
甘いもの、あんまり好きじゃないのかな。
というか、そんな甘ったるい匂いなんてしないけど。
「違ぇよ、その匂いじゃない」
問えば、そう言いながらも、その匂いの元はわからないのか。
神田は難しい顔をしたまま、周りの人々に目を向けていた。
なんだろう…煌びやかなお姉さんの香水とか?
……確かにそういうの、神田嫌いそう。