第54章 友達のお誘い
「このなかでって…ここのひとたち?」
「ボク、ヘボヘボな人間嫌いなの。ヘボヘボな世界でヘボヘボに生きてて、何が面白いの?刺激がなくっちゃ、楽しくないでしょ」
…うん。
相変わらず発言は飛び抜けてて、意味不明だけど。
周りを見れば、沢山の観光客。
その誰もが煌びやかに着飾った大人達。
私やロード程の年齢の子供は、見当たらない。
…きっと同じ子供を見つけて嬉しかったんだろうな。
そう思えば、その誘いに乗ってあげたくもなるけど。
「…ごめんね。かってにはなれたら、みんながしんぱいするから」
そこまで自由人になれれば、ある意味気持ちいいけど。
そんな自分の行いで、周りに迷惑はかけたくない。
「…ふぅん」
申し訳無さそうに言えば、猫目がぱちりと瞬く。
そして一気にその顔が無表情に変わった。
「南もヘボヘボ人間と一緒なんだぁ…残念」
つまならそうに溜息をつく。
「折角気に入ってたのに。これだから常識ある大人って、嫌いなんだよねぇ」
「…え?」
常識ある…大人?
引っ掛かる言葉に思わず凝視すれば、ロードは興味なさそうに背中を向けた。
「いいよぉ、ボク一人で遊ぶもん。じゃあね~」
「え、ちょ…まって!」
慌てて声をかけるも、さっきまでのしつこさはどこへやら。
あっさり興味を失くしたロードは、軽く手を振ると人込みの中に消えていってしまった。
「……おとなって」
今の私の姿は、どう見ても子供。
なのに無表情に私を見るその目は、まるで本当の私を見透かしているようだった。
…何者なんだろう、あの子。