第54章 友達のお誘い
「ボク日本人の人間のコ、初めて見た!あそこ、機械の玩具ばっかりだから」
機械の玩具?
あそこって…もしかして日本のこと言ってるのかな。
…いや、まさか。
日本は今他国を迎え入れない鎖国状態だから、こんな海外の子供が入れるはずがない。
「やっぱりキミ、面白いね。お友達に選んで正解だった」
「えっと…あなた、なまえは?」
よくはわからないけど、何かと不思議な発言が多い子だし。
この年頃の少女は、こんな感じなのかもしれない。
取り繕うように問いかければ、ぱちりと猫目が瞬く。
「ボクはロードっていうの。ロード、でいいよ。南」
「じゃあ…ロード?」
「うん」
ボクっ子だけど、名前はやっぱり女の子。
可愛い顔してるし、言動は不思議だけど無邪気だし。
同じ年頃だったら、良い友達になれたかもしれない。
でも私こう見えて成人なんです。
「ねぇねぇ、南。ボクと遊ばない?」
「あそぶ?」
「うん。鬼ごっこと、隠れんぼ。どっちがいい?」
え。
いや…私、今からご飯なんです。
それにこう見えて成人なんです。
そういう遊びは、一応卒業したんです。
「えーっと…いまからごはんだから…かぞく、まってないと」
「え~っ!後で遊ぼうねって言ったのにぃ」
やんわりと断れば、忽ち口を尖らせてロードが愚痴る。
「折角こんなに大きい船の中なのに、探検しないの勿体無いでしょ。ねぇ、遊ぼうよ」
「でも───」
「ここ、24時間空いてるから。また後で食べに来ればいいでしょ」
いやいや、単独行動なんて勝手なことできないし。
それこそ神田に怒られる。
「メモでも残しておけばいいし。"遊びに行ってきます"って」
いやいや、そんなメモ残したからって皆納得しないし。
それこそジジさんに笑われる。
「ぶぅ~…折角遊べると思ったのに…この中で面白いコ、キミだけだもん」
首を横に振り続ければ、ロードは忽ち眉間に皺を寄せて、つまらないとばかりに口を尖らせそっぽを向いた。