第53章 友達の印
「ジジ…お前な…」
「お、落ち着けリーバー!それよかお前っ女性を放っちゃ駄目だろッ」
「女性?ああ…」
なんとかパーカーから顔を出しながら見えたのは、振り返った班長の視線の先。
同じくカフェテラスから出てこちらに歩み寄ってくる、さっきの物腰の柔らかそうな女性。
「さっきそこで知り合って、少し話してただけだ」
「ハジメマシテ」
にこ、と笑うその女性は見るからに欧米人なのに、その口から出る言葉はどこか片言だった。
中国行きの船だし、そっちの国の出なのかな?
「ウェンハム、サン。言葉トッテモ詳シイカラ。教エテモラッテタンデス」
ああ、班長の担当する仕事には言語学も入ってるから。
成程、それで楽しそうに話してたのかな…。
「ソレヨリ、コチラノ方々ハ?」
「ああ、俺の連れですよ。さっき話してた」
「マァ、ジャアコノ子ガ。小サイノニ、ウェンハムサント一緒ニ働イテルンデスッテネ。偉イワ」
屈んで、その女性が優しく頭を撫でてくる。
話の内容に、私出てたんだ…。
…なんだろう。
なんだか、ちょっと気恥ずかしいけど…誇らしい気分。
班長にとって話に出せるくらい、私は部下としてやれてるのかな、と思うと。
ちょっとだけ、胸を張れる気がした。
「オ話聞クト、特殊ナオ仕事サレテルミタイネ」
「まぁ…はい。すこし、とくしゅといえばとくしゅかも…」
別に黒の教団のことを隠す必要性はないし。
なんとなしに苦笑しながら頷く。
「ソウ。オ仕事大変ダロウケド、頑張ッテネ」
ふわりと笑う顔は、つい見惚れそうな程綺麗なもの。
なんだか色々考え込んでしまっていた自分が、失礼に感じた。