第53章 友達の印
「ソレジャア、ウェンハムサン。色々話セテ楽シカッタワ」
「こちらこそ。良い旅を」
「貴方モネ」
腰を上げた女性が、やんわりと軽く会釈をしてその場を去る。
にこやかに見送っていた班長は、やがてその目をこちらに向けた。
「おいおい、なんだよリーバー。折角の美女を易々帰して」
「なんだよ、煩ぇな。それよりお前は南で遊び過ぎなんだよ。目を離すとすぐこれだ」
絡むジジさんを鬱陶しそうに手で払って、高い身長を屈ませて班長が顔を寄せる。
「プール楽しめたか?南」
「あ…はい、」
「そうか。ならよかった」
くしゃりと一度だけ頭を撫でて優しく笑う班長の顔に、なんだかほっとした。
神田もジジさんも私を子供扱いするけど、班長だけはいつも通り。
変わらない態度で、私を見てくれてる。
「…ん?なんだ?そのキャンディ。ジジに買ってもらったのか」
「あ、いえ。さっきそこで13さいくらいの、おんなのこからもらったんです」
「へぇ、友達ができたのか。よかったな」
「………はい」
…多分、見てくれてる。
うん……多分。