第53章 友達の印
「もしかして、迷子かな?」
やっぱり。
気さくに聞いてくるそのお兄さんの言葉は、明らかに迷子の子供に投げかけるものだった。
「ボクは迷子じゃないよぉ。このコは知らないけど」
「あれ。お嬢ちゃん達、姉妹じゃないの?」
「違うよ~。今、お友達になったの」
ぽふんと、短髪の女の子が私の頭に手を乗せて笑う。
「じゃあボクもう行くね。これ、お友達の印にあげる★」
にこっと私に笑って、差し出してきたのは持っていた大きな棒つきキャンディ。
なんだろう、ティナさんといい…キャンディ貰う比率高いなぁ。
子供へのプレゼント菓子の定番なのかな。
「あ、ありがとう…」
好意は無碍にできないし、相手は未成年の子供。
大人しく受け取れば、嬉しそうにその子は笑った。
笑うと愛嬌があって可愛い気がする。
「また後で遊ぼうねぇ」
ひらひらと手を振って、小走りに駆けていく。
その姿を見送りながら、はっとした。
残されたのは、私とこのお兄さんだけ。
…まずい。
「えっと、じゃあわたしも…」
「あ、待って。お嬢ちゃん、歳幾つ?一人じゃ危ないよ」
やっぱり…!
確実に迷子認定された気がする…!
見上げたお兄さんの笑う顔はどこか人懐っこくて、太陽に透けるその赤髪もあって、どことなくラビを思い出させた。
…ラビ、そういえば元気にしてるかな。
「お父さんとお母さんは?」
「え、と…」
屈んで気さくに話しかけてくれるお兄さんには悪いけど、上手く言葉が返せない。
お父さんとお母さん、いないし。
ナンパに走る上司と、暴君エクソシストならいるけど。
「まさか一人でお買い物来たの?偉いね」
「いえ、…はい、」
この体でいると地味に大変だけど、地味に助かっていることも一つある。
それは周りの大人が、色々と優しくしてくれること。
日本人故か、割と幼く見えるのか。
そんな私の見た目に、目を掛けてくれる方々は多かった。
ありがとうございます。