第53章 友達の印
「あ、フォークひとつたりませんね。わたしとってきます」
「おう、悪いな。座席確保してるから」
「はい」
一人分足りないフォークに気付いて、ジジさんに伝えると出店に戻る。
カウンター横に置いてある、箱に入ったフォークを取ろうとして…うわ。
届かない。
背伸びしても、どうにもフォークに手は辿り着かず。
こういうところ、子供の体だと地味に大変な気がする。
「すみません、あの───」
「はい、どーぞ」
出店の人に取ってもらおうと、カウンターに声をかける。
するとそれより早く目の前にフォークを差し出された。
…え?
「これ、欲しかった物で合ってる?」
視線を上げれば、知らない顔の女の子が一人。
ぱっちり猫目の、黒髪ショートヘア。
来ている服はフリルやリボンがついた、ロリータファッションのような物だった。
なんだか、此処ら辺で見かけない格好だったからつい目を惹く。
「あ、うん。ありがとう」
「どう致しまして~」
13、4歳程の女の子だから、ついタメ口でお礼言っちゃったけど。
その子は特に気にする様子もなく、にっこりと笑った。
「ふぅん。キミ、面白い姿してるね」
「?」
じろじろと私を見たかと思うと、屈んで目線を合わせられる。
ツンツンと跳ねた黒髪は、この年頃の女の子では珍しい髪型だと思う。
間近に見えた猫目の縁に並ぶ睫は長く、その年頃にしては多少大人びて見えた。
「中と外が、一致してないねぇ」
中と外?
何を言ってるのかよくわからない。
…この年頃の子は、こういう発言する子多いのかな…。
「えっと、もういかないと…」
「ええ~、なんだか面白そうなのに。ボクと遊ばない?」
「ごめんなさい、おやがまってるから」
ぺこりと頭を下げれば、つまんない、とその子が口を尖らせる。
動作や言葉は、随分…年相応というか幼い感じ。
個性ある子だなぁ。
「じゃあ───」
「こんにちは」
不意にその子の声を遮ったのは、別の声。
目を向ければ私達を見下ろす、またもや知らない男性。
「お嬢ちゃん達、二人だけ?お父さんとお母さんは?」
これは………まさか、迷子の二人とでも思われているのかな…?