第52章 1/1元旦(番外編)
ラビside
「…南?」
「あ…おかえり、」
リーバーと別れて自室に戻れば、オレの部屋のドアの前で背を預けて立つ南の姿があった。
思わず足を止めれば、様子を伺うように南の暗い色の目が見上げてくる。
…少し、気まずい。
「…その、ごめ」
「ごめん」
時間を置いて冷えた頭は、罪悪感しか残らなくて。
頭を下げてさっきの謝罪をしようとすれば、それより先に南に頭を下げられた。
…へ?
なんで?
「子供扱い、する気はなかったんだけど…そんなふうに見えてたら、ごめん」
顔を上げた南の目は、どことなく不安げで。
「ただ、ラビが喜んでくれたらなって…そう、思って…用意しただけで…他意はないから」
手持ち無沙汰に額を指先で擦りながら、視線を逸らす。
その言葉は、必死に選んで伝えようとしているみたいだった。
…嗚呼、そっか。
「…ん。南は悪くねぇよ。悪いのはオレさ」
オレだけじゃなかったんだな。
オレだけ、勝手に振り回されてるなんて思い込んでて。
「折角、南が好意でくれようとしたもんだったのに」
南だって、こうしてオレの言動で不安を感じたりするってのに。
「…まだあのお年玉、残ってんさ?」
「え?うん。ここにあるよ」
「まだオレが貰う資格、あるならさ。貰ってもいい?」
取り出した紙袋を指差せば、こくりと大きく南が頷く。
「…はい。あけまして、おめでとう」
「ん。おめでとさ」
差し出された小さな紙袋。
それを受け取って、南に視線を上げる。
「…あのさ。これって、オレの好きに使っていいんさ?」
「うん、勿論」
「じゃあ…」
紙袋を顔の横まで上げて問いかけて、当たり前に頷く南にニッと笑いかけた。
「ちょっと、付き合って欲しい所あんだけど」
折角こうして南との変な空気も元に戻せたし。
名誉挽回ってやつ、しないとな。