第52章 1/1元旦(番外編)
普段軽い奴に見えていたから、少しだけほっとする。
真面目に南のことを想ってるんなら、少しくらい譲歩───…する訳ないな。
そんなもん。
俺だって、譲りたくない気持ちがある。
「…リーバーはんちょ」
「なんだ」
お互いに、別々の方向に顔を向けたまま。
「…やんねーからな」
「…元よりお前のもんじゃないだろ」
ぽつりと零れたのは、お互いの本音。
こいつのことを人としては好いている。
社交的で明るくて、場を和ましてくれる奴だ。
でも悪いな。
そういう面では、俺は"大人"にはなれねぇんだよ。
「ッやっぱそうなんさ…っ?」
俺の言葉に、驚いたようにラビが振り返る。
なんだ今更。
とっくに気付いてたと思ってたが。
「っでも先に見つけたのはオレさ」
「"見つけたのは"、だろ」
だったら先に、"捕まえればいい"。
「手に入れたもん勝ちだろ」
視線をラビに向けて、にっこり笑いかける。
俺を見て驚いたように見開いた片目は、その一瞬だけで。
「は…上等、」
口角を上げて笑みを作る。
それは南のゴーレムを貰った時に、俺だけに見せたもんと似ていた。
戦闘時に見せる、好戦的な笑み。
どうやら"そういう"相手だと認めたらしい。
「とりあえず、今年も一年。よろしくな」
「どーも」
新年を迎えて、新しい思いを胸に。
どうやらラビとは、色んな意味で世話になりそうだ。