第52章 1/1元旦(番外編)
「はんちょって…大人だよな」
「は?なんだ急に」
「仕事忙しくても、平気な顔できて。そうやって他人を気にかけたり、面倒見たりできてさ」
「…何があったんだよ」
「……オレはどうせガキなんさ…」
いや、まぁ…俺から見たら子供だけど。
見るからに凹んでる今のラビには、言うのはやめておいた方がいいな。
「オレだってはんちょみたいに、偶には尊敬の目とか、憧れの目で見られてみたいさ。エクソシストだからじゃなく、オレ自身を見て」
「誰のこと言ってんだよ」
「…別に」
ちらりと向いた目はまたすぐ逸らされる。
床に屈み込んだまま、ラビがはぁ~っと大きな溜息をつく。
…もしかして。
「…それは南のことか?」
「………」
その無言は肯定だった。
ラビが南に好意を寄せているのは知っている。
あんなにはっきりと口にされたからな。
それを応援する気はないが…こうも凹まれると少しばかり同情もする。
「何があったのか知らんが…それはないもの強請りだと思うぞ」
ラビの横で、同じように壁に背中を付けて屈む。
「お前を見る時の南の顔。知ってるか?」
「…オレ?」
「建前も何もない、素の顔をしてる」
ラビと南が前から仲良いことは、知っていた。
時々二人でいる姿を見かけたこともある。
屈託なく笑って話すラビの横で、南はいつも楽しそうにしていた。
それは仕事場で見せるような顔じゃない。
素の、安心しきったような表情だった。
「そういう顔、俺にはあまり見せたことがない。見たいと思っても、簡単には見られない。…ないもの強請りだろ?」
壁に背を付けて、高い教団の天井を見上げる。
視線だけラビに向けて苦笑すれば、その目はぱちりと瞬いた。
「"隣の芝生は青く見える"ってやつだ。南は誰も贔屓目でなんて見てないぞ」
「それは…わかってんけどさ」
口を尖らせてラビがそっぽを向く。
「「………」」
沈黙ができる。
こうしてラビと南のことをちゃんと話したことはなかったが…改めて話すと思い知る。
こいつはやっぱり南のことが、心から好きなんだろう。