第52章 1/1元旦(番外編)
───1月1日。
新しい年明けの日。
いつものように教団の食堂に向かえば、あちこちから「Happy new year」の声が上がる。
年中無休のこの職場じゃ祝い事を早々できなくても、流石にこの日は特別らしく、周りの人間は少なからず浮き足立っていた。
「……はぁ」
オレ一人、除いて。
「なんですか、朝っぱらから生気のない顔して。ご飯が美味しく食べられないでしょう」
「めっちゃ美味そうにもりもり食ってんじゃん…」
今オレ、精神的ダメージ半端ないから。
あんまり弄らないでアレンさん。
「あけましておめでとう、アレン君。ラビ」
「あ、リナリー。あけましておめでとうございます」
「おー…」
「…なんかラビ、元気ない?」
「さっきからこの調子なんですよ」
にこやかに挨拶してくるリナリーにも挨拶を返す気力もなく、机に突っ伏して項垂れる。
…初夢で夢精って。
いくら若いからって…初夢でって。
しかも初夢があれって。
いやめっちゃ記憶に残ってるけど、寧ろ脳内データに即保存だけど!
…でもあれ、所詮オレの妄想だし。
そんな妄想に縋り付いてる自分が、少し悲しくなる。
「ふぁ…眠…」
「南ー、食堂こっちだから。そっちトイレー。目ぇ覚ませー」
「───!」
その時、聞こえてきた渦中の名前に思わずガバリと顔が上がる。
見えたのは、ジェリーんとこで朝飯貰ってる科学班連中。
また徹夜でもしていたのか、皆クタクタの白衣姿。
その中に南の姿も混じって見えた。
「っ…」
夢の中で見た南が脳内リプレイされて、じわりと頬が熱くなる。
まずい。
これじゃあ、まともに南の顔が見られねぇかも。