第51章 12/25Xmas(番外編)
ふや、と柔らかい笑みを称えて、同じように柔らかく撫でてくれるあの時の手は、とても心地良かった。
…ああ、どうしよう。
「僕が年上キラーなら、きっと南さんは年下キラーですね」
「え、頭撫でただけで?」
思わず漏れた僕の言葉に、南さんが笑う。
違いますよ。
僕が動かされたのは、動作じゃなくてその心にです。
「…南さん」
「うん?」
心の言葉を口に出すことはせずに、イルミネーションを見つめる。
近くに感じる体温は酷く心地良くて、安心するのに同じようにドキドキした。
「もしよかったら…来年も。こうして、誕生日に一緒に過ごしてくれませんか?」
いつも忙しい科学班だから、簡単に約束なんてできるかわからなかったけど。
もしできるなら、こうして来年も南さんにおめでとうって祝ってもらいたい。
「え、いいの?」
返ってきたのは、拍子抜けしそうな程当たり前に受けてくれた声。
「アレンがいいなら、喜んで。来年はちゃんとしたプレゼントも用意するよ」
「充分これも素敵なプレゼントでしたよ」
「そう?…じゃあ此処は、アレンとの秘密の場所ね」
軽く身を捩って、南さんが僕に視線を向ける。
近くにある顔が少し赤い顔のまま、ふわ、と笑って。
「誰にも言っちゃ駄目だよ」
そんな南さんの姿に、どうしようもなく心が満たされるのを感じた。
あの日、マナと一緒に。
一つのパンケーキを分け合った時のように。
「僕と南さんとの秘密ですね」
「うん。秘密」
秘密、と口にして。
どちらともなく、二人で笑い合う。
冷たい冬の風が吹き付ける、高い塔の上。
視界にはキラキラと光るクリスマスカラーのイルミネーションと、腕の中には、じんわりと温かく感じる彼女の体温。