第51章 12/25Xmas(番外編)
「お誕生日、おめでとう」
もう一度南さんが、お祝いの言葉を口にする。
色とりどりのネオンを背にして、微笑む顔。
いつもの仕事終わりの疲れきった顔にくたびれた白衣姿で、いつもと変わらない南さんなのに。
目が、離せなかった。
「……ありがとうございます」
思わず反応が遅れてしまった。
いつの間にか、目で追うようになっていた存在。
それは同じエクソシストのリナリーやミランダさんじゃなく、科学班で働く普通の女性。
初めて、この間一緒に任務で行動を共にして。
初めて、色んな南さんの顔を見た。
自然を前に子供みたいにはしゃぐ姿だったり、AKUMAに捕らわれても体を張って抗う姿だったり。
…あの時は凄く、冷や冷やしたっけ。
「何か欲しいものあったら、遠慮なく言っていいよ」
「じゃあ…もう少し、此処にいてもいいですか?」
「そんなことでいいの?」
「はい」
南さんと二人で、並んで見るクリスマスの景色。
それが何より僕には最高の贈り物だった。
贅沢を言っていいなら、もう少し此処で堪能していたい。
「───くしゅっ」
すると不意にそんな南さんから、小さなくしゃみが漏れる。
高い位置にある吹き抜けだから、通り過ぎる冬の風も強い。
僕は上着も着てたし平気だったけど、南さんはくたびれたいつもの白衣姿。
「ごめんなさい、寒いですよね…っやっぱり戻りましょうか」
「あ、ううんっ大丈夫」
慌てて言えば、同じように慌てて首を横に振られた。
「私も、もう少し此処にいたいから。…せめて日付が変わるまで。アレンの誕生日、祝わせて」
寒さからか、少し鼻の頭を赤くして南さんが笑う。
そんな顔でそんなこと言われて、駄目だなんて言えない。
…寧ろ嬉しいって思ってしまう。
「じゃあ、はい。これ」
「え?」
それなら取る道は一つ。