第51章 12/25Xmas(番外編)
「───わぁ…っ」
寒い冬の風が、顔に吹き付ける。
だけどそう気にならないのは、目の前の光景に目を奪われたから。
「どう?結構穴場でしょ」
見せたいものがある。
そう南さんに言われて、案内された場所。
それは教団の高い塔の上に位置する、小さな屋外の吹き抜けだった。
「凄く綺麗ですねっ」
「今日はクリスマスだから。イルミネーションも一番綺麗なんだよ」
元々高い崖の上に建っている建物だから、更にその高い塔の上となれば、視界も凄く広い。
其処から見える下層の街並みは、色とりどりのネオンが輝いていた。
赤や青、緑に黄。
チカチカと時間事に変わる色合いは、いつまでも見ていて飽きない。
「こんな場所があるなんて、知らなかった」
「あそこの階段は、普段誰も使わないからね。知ってる人は少ないと思うよ」
だから何処にも人影が見当たらなかったんだ。
納得しながら隣に立つ南さんを見れば、その目は僕に向いていて、満足したように笑っていた。
「よかった、喜んでもらえて」
吹き抜けを囲うように立てられた柵に両腕を乗せて、視線をこちらに向けながら。
笑った南さんの口から、発せられた言葉。
「ハッピーバースディ、アレン」
それは、思いもかけないものだった。
「…え?」
「今日、誕生日でしょ。12月25日」
「………なんで…」
この教団内の誰かに、僕の誕生日を伝えたことはない。
知っている人なんて、いないはずなのに。
「教えてくれたでしょ、初めて会った時」
「初めて会った時?」
確かイノセンスの修理を、コムイさんから受けた日。
麻酔をかけられてはいるけど、トラウマな修理法に視線を逸らして耐えていたら右手を握って、南さんが話しかけてきて───……あ。