第51章 12/25Xmas(番外編)
「そういえばクリスマスメニュー、ほとんどアレンが食べ尽くしたんだって?」
「美味しくて、つい」
「あはは、凄い食べっぷりだったんだろうなぁ」
雑談をしながら、南さんの足が階段を上る。
「南さんはクリスマスメニュー、食べてないんですか」
「ちょっとなら貰ったよ。ジェリーさんが研究室まで持ってきてくれて」
その後を追いながら、同じく階段を上がる。
「あのケーキ美味しかったよね。スフレの」
「僕はチョコミントも好きでした」
聞こえるのは、二人の足音だけ。
前を歩く南さんの頭に乗った、ティムのゆらゆらと揺れる金色の尾を見ながら───…ん?
「でもやっぱり王道はブッシュ・ド・ノエルじゃない?あの形見ると、クリスマスだなーって思う」
「そうですね…。……あの、南さん」
「うん?」
階段を上る足を止めて、呼びかける。
振り返った南さんが、不思議そうに見返す。
それはいつもの南さんだったけど、どうしてもその疑問は無視できなかった。
「…なんか、ずっと上に向かってません?」
此処が何処かも定かじゃないけど、僕の部屋は食堂の隣。
食堂は教団の下層にあるから…この階段を上がり続けて、辿り着く気はなんとなくしない。
本当に、僕の部屋に向かっているのか。
「これ、道が違うような…」
なんとなく疑問を口にすれば、目を丸くした南さんは。
「…バレた?」
そう、気まずそうに笑った。
え?
「…まさか…」
「うん、ごめんねアレン。実は───」
「南さんも迷子になったんですかっ?」
「……へ?」
「気付かなくてすみません!案内ならティムに任せますからっ」
「や、アレン。違う違う」
南さんの頭の上で寛ぐティムに手を伸ばそうとすれば、南さんに首を振られて止められた。
え?
「迷子にはなってないよ。…私が違う所に向かってただけで」
「え?…どういうことですか?」
意図がわからなくて、思わず困惑する。
そんな僕に、南さんはもう一度罰が悪そうに笑った。
「アレンに、見せたいものがあるの」