第51章 12/25Xmas(番外編)
「…って、駄目だ。思い出に浸ってる場合じゃない」
帰り道、探さないと。
はっと我に返って顔を上げる。
暗い教団のその沢山階段のある道は、普段はあまり使われていないのか。
人影一つ見当たらない。
大きな建物だとは思ってたけど、まさか迷子になるなんて。
自分の方向音痴さは知ってるけど、教団で今まで一度も迷子になんか──
「…ティムだな、やっぱり」
多分いつも、道先案内をしてくれてたのはティムだ。
どうしよう。
流石に教団内部で遭難なんてことにはならないだろうけど…多分。
僕がいないのは、明日になれば誰かが気付いてくれるだろうし。
そうすれば誰かが捜しに来て………くれるだろうけど、神田とかにバレるのは嫌だな。
絶対に馬鹿にしてきそうな気がする。
「…意地でも帰ろう」
そう決意して、とりあえず足を踏み出す。
───パタタ、
その時だった。
知った、その羽音を聞いたのは。
「ティム?」
思わず振り返る。
暗い階段の途中にある、廊下の奥。
其処に見えたのは、金色の小さな球体。
「ティム!」
ティムだ。
思わず駆け寄れば、小さな丸い体が突っ込んでくる。
「よかった!捜しに来てくれたのか?」
コクコクと頷くその姿に、安堵と嬉しさが増して抱きしめる。
一応師匠のゴーレムだけど、僕にとってもなくてはならない存在だと思う。
色んな意味で。
「いた!アレンっ」
そこに別の声が響いた。
「え?」
ティムしかいないと思ってたから、驚いて上げた視界が映したのは、ティムが飛んできた暗い廊下。
小走りにこっちに駆けて来る、白い白衣姿の女性。
「…南さん?」
それは、朝に一度だけ見かけたその人の姿だった。