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科学班の恋【D.Gray-man】

第49章 海へ



「…部屋に戻る」

「ずっと部屋にこもるつもりか?食事にも出られねぇぞ」



それならと、部屋に戻ろうと踵を返す神田。
その肩を、がしりと掴んで。



「それなら子連れでいた方が助かるだろ」

「わ…っ」



ジジさんは抱いていた私の体を、神田に押し付けた。



「なん───」

「逆ナン予防に最適なのは子供だろ!つーことで、南の面倒頼んだぜ♪」



神田が反論する前に、にぱっと笑い言ったジジさんの言葉は納得できるもの。
…どうやら今回は、ジジさんの方が一枚上手だったらしい。



「でも、みずぎなんてないし…だいたい、こんなすがたでみずぎなんて…」



あんなに豪勢な船の上のプールなんて確かに魅力的だけど、どうしても譲れないのは、そこ。
精神は大人なのに、子供体型で水着着るとか。
そんなの一生の恥になりそうな気がする。



「そこは任せろ♪」



ばちんっと大袈裟な程にウィンクして親指を立ててくるジジさんには、嫌な予感しかしない。
どうしよう。
リーバー班長、早く荷物の手続きから戻ってきて下さい…っ



「で、でも…っ」

「あのな、南」



なんとかジジさんを説き伏せようとすれば、不意にその顔がおふざけから真面目なものに変わる。
その変わりようについ口を閉じると、ジジさんの大きな手が、優しく頭に触れた。



「お前は仕事人間過ぎるからな…上司として、可愛い部下にはもっと余暇を楽しんで欲しいんだよ。折角の遊び場なんだし」



見下ろす眼鏡の奥の瞳は、嘘を付いているようには見えない。
…部下を大事にするジジさんの気持ちは、よく知っていたから。



「お前もだ、神田。俺からすりゃ、お前も南も可愛い子供なんだよ」



その目が、私を抱えてる神田に移る。



「教団内じゃ仕事尽くしで、こんな遊びなんてほとんどできねぇだろ。俺はお前らに楽しんで欲しいの」



そう笑うジジさんに、流石の神田も黙り込んだ。
小さい頃の神田を知ってるジジさんからすれば、きっと言葉の通り、今でも神田は大きな子供みたいなもの。
いつも大袈裟に絡んでくるジジさんだけど。
普段人と関わろうとしない神田には、ジジさんみたいな存在は必要なのかもしれない。

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