第49章 海へ
「わぁ…っ」
不機嫌MAXの神田に背中を押され、乗船手続きをすること小一時間。
私達は真っ青な海に囲まれた大きな船の上にいた。
「なんだ?南、まさか海は初めてとか言わねぇよな」
「いえ。でもすごくひさしぶりで…しおかぜがきもちいいですねっ」
船の甲板で柵に手をかけながら、広い海を見渡す。
どこまでも地平線が続く、広い広い海。
その上には同じく青い空が広がっている。
その広大さに思わずテンションは上がって、隣で問いかけてくるジジさんにもつい笑顔で返してしまう。
「そうだなぁ。海っつーと、やっぱりアレだよな」
「あれ?」
そんな私に同じく満面の笑みを見せて、ジジさんが視線を向けた先は───…甲板の後方。
この大型の乗客船は、観光客も沢山乗せているみたいで。
「熱い太陽!白い砂浜!そして水着の美女!」
甲板に設置された豪華なプールは、観光客の人で賑わっていた。
その中にはジジさんの言う通りの、スタイル抜群の水着美女もいる訳で。
「………」
「なんだ南、その目は」
「…ジジさん、いやらしいめしてます」
「当たり前だろ。水着美女見て反応しない男がいるか」
「…あそこに、ひとり」
指差した先は、甲板の隅の柵に寄りかかって退屈そうに海を見ている神田。
「…ありゃー例外だ。寧ろアイツが水着にウハウハしてたら、天変地異が起こる」
「ですね」
まじまじと、ジジさんと一緒にその姿を見て頷く。
うん、想像しただけで怖ろしい。
「と、いうことでだ。折角余暇の時間が与えられたんだし。泳ぎに行こうぜ、南」
「…はい?」
うんうんと頷いていると、不意に満面の笑みで言うジジさん。
その予想もしてなかった誘いに、思わず返事は遅れてしまった。
……今、なんて?