第48章 おやすみの、
「…はぁ、」
駄目だな…いい歳して、情けない。
思わず溜息が漏れて、手元の計算が止まる。
───っと、駄目だ。
溜息を慌てて飲み込んで、目の前の計算表に集中する。
また小さな監視役に怒られると思って、視界の端でその小さな頭をぼんやりとだけ把握すれば。
「…?」
うつらうつらと、揺れる小さな頭。
見れば、再び微睡みの中で船を漕いでいた。
…よっぽど我慢してるんだな。
「………」
言ってもベッドには行かないだろうから、早く終わらせてやろうとペンを走らせる速度を上げる。
すると、ぽすりと不意に腕に掛かる軽い重み。
「…南?」
うつらうつらと揺れていた頭は、とうとう限界がきたのか。
俺の腕に頭を傾けて、寄り掛かっていた。
「すー…」
しっかりと閉じてしまった瞼に、その小さな口から漏れるのは確かな寝息。
…寝落ちたのか。
「…っと、」
少しでも身を捩れば、寄り掛かっている南の頭も揺れて咄嗟に動きを止める。
まずいな…ここで動いたら起こしてしまうかもしれない。
だからといって、此処で寝かせたら充分な睡眠も取れないだろうし。
…起こしたら、また俺の仕事の手伝いをするんだろうな。
「…仕方ない」
思考を巡り巡らせ、考えた結果。
とにかく目の前の仕事を、急ぎの分だけ終わらせることにした。
そうすりゃ、起こしても南もベッドで寝てくれるだろう。
となれば急いで終わらせないと。
肩に感じる重みに向かいそうになる意識を無理矢理切り替えて、目の前の仕事に集中することにした。