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科学班の恋【D.Gray-man】

第48章 おやすみの、



「そういえば、あれいらいですね。はんちょうとのてつや」



眠気を覚ますためか、南が世間話を持ちかける。



「かんたんなすうしきもんだいを、たのまれて」

「ああ。100点満点取ったやつな」

「…あれ、とれないほうがおかしいですから」



そういえば、と思い出す。
あの時は初めて…南への恋愛感情というものを自覚して、同時に一人でラビの部屋に向かった南の引っ掛かる態度に不安を感じた。

…そういえば、あの問題は解決したのか。



「…南、」

「はい?」



計算表から視線を外す。
見下ろす南の顔に、その疑問を問い掛けようとして───



「…いや。なんでもない」



…その言葉を呑み込んだ。

あれ以来、あの薄暗い廊下で見た泣きそうな南の顔は一度も見ていない。
南が一人で抱えようとした問題だ。
南から言わない限り、無闇に詮索することじゃない。



「そう…ですか?」



見上げてくる顔に笑顔で返して、再び化学式の解答に取り掛かる。

何があったのか、俺には何もわからないから。
予想することしかできないし、それもただの俺の想像でしかない。
介入できないことには、不安を感じるし胸も騒ぐ。
でも無理に問いただすようなことはしたくない。

好きだから力になりたいとか役に立ちたいとか、そういう思いは俺にもあるけれど。
好きだから、きっと簡単には踏み出せないんだろう。



任務先で南が怪我した時、その体の傷に心配した。
でもそれ以上に心配だったのは心。
後で室長に報告書を見せてもらって知った、デンケ村の黒い歴史。
誰かの為に、何かを成そうとする真っ直ぐな奴だから。
ああいう人の黒い部分を突き付けられて、何も感じない奴じゃない。



「はんちょう。て、またとまってます」

「ぁ…ああ、悪い」



二度目の指摘に、慌ててまたペンを走らせる。

任務から帰ってきた南はいつも通りで、だから俺も任務先のことについては何も聞かなかった。
上司としてなら、話を聞いて労って励ますこともできる。
それを踏みとどまらせたのは、きっと南への特別な想いだ。

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