第47章 可愛い貴方
いつもはくたびれた白衣姿で、他の科学班の皆みたいに徹夜で疲れた顔をしてるから、そんなイメージがついちゃってるけど。
スーツを脱いだ、シャツにベストの格好。
眼鏡の奥の薄い色の目は、真剣なのにどこか余裕も見て取れる。
昼間は多少ゆっくりできたおかげか、その顔に然程疲れは見えない。
こうして見ると、その背丈や顔立ちも相俟って、班長がいつもより大人びた一人の男性に見えた。
「………」
超絶美形の神田が隣にいたから、忘れてたけど。
リーバー班長も充分にモテる気がする。
「なんだ?」
「え?」
思わずじっと見てしまっていたからか。
視線は変わらず計算表に落としたまま、班長が問い掛けてきた。
「そんなに見られると、照れるんだが」
計算が終わったのか、ペンを止めてこちらを向いた薄いグレーの目と合う。
照れ臭そうに笑う班長に、つい私の顔も熱くなる。
「す、すみません…」
「謝らなくていいから、眠気を我慢してたらちゃんと言えよ?」
最近、班長によく言われていたことを思い出す。
何かあったら我慢せずに上司を頼れって。
どこまでも気遣ってくれる、班長のその姿もあったからなのか。
「…じゃあ、はんちょうもねてくれますか」
気付いたら、そう口にしていた。
「寝る?」
「…このしごとが、いそぎじゃないなら、でいいんです。もしそうなら…はんちょうに、ちゃんとやすんでほしいんです」
もごもごと漏れる私の声は覚束ない。
でもずっと言いたかったこと。
コムイ室長の世話や、科学班での班長としての仕事や、アレン達エクソシストに対してもどこかお兄さん的な立場で。
リーバー班長はいつも頼られる側。
頼れる性格だから、当たり前にしてることなのかもしれないけど…偶には頼って欲しい。
偶には班長が我儘言ったって、いいと思う。
「わたしたちにきをつかってくれるのは、うれしいけど。…もうすこし、じぶんのからだもだいじにしてください」
班長と私は、上司と部下。
だから頼って欲しいなんて、そんな偉そうなこと軽々しく言えないけど。
「はんちょうになにかあったら…しんぱいします」
それは確かに、私の本音だった。