第47章 可愛い貴方
「……心配、か?」
「はい」
「…そうか」
「?」
見上げた班長の顔は、どこかぎこちない。
言われた言葉が凄く予想外だったのか。
ポリポリと首元を掻きながら確認する様は、なんだか言われ慣れてない人の反応だった。
…多分、本当に言われ慣れてないんだろうな。
「そう、か」
もう一度小さく確認するように呟いて、班長は徐に片手で顔を覆った。
「あー…うん。そう、だな」
大きな手で覆われた顔は見えない。
でもその耳は、ほんのり赤い。
…もしかして照れてる?
「………」
どうしよう。
今まで班長が照れる顔は、少ないけど見たことはある。
さっきもそうだったし。
そんな時は、つられて照れたり珍しいなぁなんて思うばかりだったのに。
なんでだろう。
慣れない言葉に照れる班長が、どこか……可愛く見える、なんて。
………。
…どうしよう。
そんな感情、上司に対して失礼なのに。
「部下にそんなこと言われる日がくるとはな。…はは、なんか照れるな」
顔から離れる手。
見えた班長の顔は、照れ臭そうに微笑んでいた。
「えらそうにいって、すみません…でも───」
「いや。ありがとう」
頬に添えられる、大きな手。
薄いグレーの目が、優しく細まる。
「折角、南から貰った言葉だ。…大事にする」
まだ僅かに赤い顔で、照れ臭そうに笑う。
そんなあまり見たことのない班長のその顔に、その言葉と同じように。
大事にしたいと思った。
周りの皆が班長を頼るのなら、その分私が班長を甘やかせてあげたい。
…なんて偉そうな思いなんだろうと、少し自分に呆れたけど。
───それも束の間。
「あ。でも締め切りの関係上、ここまでは済ませておきたいから。悪い、これだけやらせてもらえるか」
「……………わかりました」
やっぱりリーバー班長は、生粋の仕事中毒者だった。