第46章 父と娘
「そういや、アジア支部までどういう経路で辿るんだ?俺は船使って来たけどよ」
「ああ。列車を乗り継いで、ジジと同じで船を使って向かう。まぁ、三日くらいで着くか」
「…ハァ」
列車の一般車両に、向かい合って座る。
リーバー班長の言葉に、面倒臭そうに溜息をついたのは神田だった。
本当に面倒だったんだなぁ…。
「………」
三日間。
その間は班長も多少は休めるのかな。
伺うように向かいに座る班長を見上げれば、地図を見ていた目と合った。
「どうした。腹でも減ったか?」
「あ、いえ…」
「俺は減ったなー。南、駅弁頼むわ。ほらこれ、小遣い分やるから」
「はい…って、わたしはこどもじゃありません」
ジャラジャラとポケットから取り出した小銭をジジさんに渡され、ついでに頭を撫でられる。
「それよかリーバー、ここの道順なんだが…」
「ん?」
だけど地図を覗き込んで話し始めるジジさんに、反抗するのはなんだか野暮で仕方なくお弁当を買いに行くことにした。
「あ。神田も行けよ、荷物持ち。南一人じゃ大変だろ」
椅子から降りて列車内を歩き出せば、思い出したように班長の声が追いかける。
………班長。
その優しさ、今は要らないかもしれないです…。
「うりこさん、どこかな…」
「………」
「えーっと…」
「………」
「いないなぁ…」
ほらね!
列車内の売り子さんを捜す私の後ろを、黙ってついてくる神田。
無駄に威圧感を放ってはこないけど、その無言はちょっと怖い。
こうなるのは目に見えてたから、まだ一人の方が楽だったんだけど。
神田と二人きりでアジア支部に行こうものなら、やっぱり無言の威圧に耐え切れなかったと思う。