第46章 父と娘
班長の手は時々頭や肩に触れていたそれより、いつもよりずっと大きい。
だけど握り返してくるその動作は、酷く優しかった。
「うわ、リーバー。そうやってると親子に見えるぞ」
「うるせぇな。この歳の子供がいる程、歳食っちゃいねぇよ」
面白そうにからかってくるジジさんが、この時ばかりは救いだった。
じゃなきゃ変に照れてしまう気がして。
プルルルル
駅に近付くと、更に人混みは大きくなる。
班長に手を繋いでもらっていたのが、救いだった。
じゃなきゃ人混みの波に攫われてしまいそうな程。
子供って大変だったんだなぁ。
「おい、あれ俺らが乗る列車ベルじゃねぇか?」
「まずい、走るぞっ」
「チッ」
遠めに聞こえる列車のベル。
ジジさんの言葉に、班長の歩幅が遠くなる。
「わっ…」
「大丈夫かっ?」
「は、いっ」
一生懸命ついて走りながら、しっかりと手を握り返す。
「すみませんっ乗ります!」
駅員さんが乗り遅れがないか、辺りを確認している中、なんとか転がり込むように班長と共に列車に飛び乗った。
同時に背中の扉がプシューッと閉まる音。
よかった、間に合った…っ
「おやおや、慌しいな」
「す、すみません…」
目が合った駅員さんの言葉に、慌てて頭を下げればにこりと優しく笑って返された。
「大丈夫だよ。お嬢ちゃんはしっかりしてるね」
そのまま、ぽんぽんと頭を撫でられて。
「お父さんに、似たのかな?」
そう、リーバー班長を見て笑った。
「「………」」
「ほら見ろ、親子だろーっ」
お腹を抱えて笑うジジさんに、この時ばかりは班長も反論しなかった。
…なんていうか…すみません、班長。