第45章 好きの理由
「一目惚れする奴を、否定する気はないけどさ。オレも割とそっちだったし」
だよね、やっぱり。
すぐ美女見るとストライク状態になってて、女性に対しては軽いんだなぁと思ってた。
だからラフに付き合ってる私のことは、視野に入れてないと思ってたんだけど。
「でも南に対しては、そうじゃなかったから」
抱きしめていた腕が離れる。
それでも付かず離れず、緩く体に回されたまま。
「綺麗事を言う訳じゃないけど…多分オレは、南が美人でもそうでなくても。好きになったんじゃねぇかなって思う」
それは、はっきりとした口調じゃなかった。
自分でも試行錯誤するかのように、紡がれた言葉。
それでも確かに、見上げた顔は私を見つめて。
「そこに理由なんてないさ。あったら、苦労しねぇよ」
もう一度、困ったようにラビは笑った。
「………そっか、」
距離感とか言葉とか表情とか。
色々理由はあったけど、なんだか気恥ずかしくて。
見た目を褒められるのは、やっぱり女性として嬉しいけど。
それ以上に真っ直ぐに私自身を見られてる気がして。
思わず俯く。
クロス元帥が口にした素敵に並べられた言葉じゃなくても、ラビのその言葉は私の心に染み込んだ。
「………」
「……南?」
「…なに」
「耳、真っ赤」
「!」
思わず反射的に両耳を押さえれば、頭上で笑う声。
「ははっ可愛いー♪」
そしてまたもや、ぎゅうっと抱きしめられる。
だからスキンシップ過度だって…!
「オレ、その歳は範囲外だけどさ。子供の南って可愛いよな」
子供のって何、子供のって。