第44章 新たな任務
「すみません…」
「いや、それは俺の責任です。俺が許可したので」
「い、いえ!はんちょうはわるくないですから…っ」
「はいはい、庇い合いはそこまで」
それは仕事のミスだった。
今回の六幻の検査書は、作る予定はないものだった。
勝手に作ってしまった私のそれが、最終確認として回ってきたコムイ室長の目に止まったらしい。
項垂れて謝る私を、直属の上司としてリーバー班長が庇う。
凄く申し訳なくて慌てて首を横に振れば、凛とした室長の声が止める。
いつもはふざけてる室長だから、ついつい忘れがちになるけど、この人は此処で一番偉い人。
仕事も、やれば誰よりもできる人。
「それにぶっちゃけ悪いのは、神田くんだからね。わかっててやらせたんだから」
「………」
溜息混じりに言う室長に、ソファに足を組んで座ったまま神田は無言で視線を逸らした。
…それ、どういう意味ですか。
「ちゃんとズゥ老師に見せないと、任務には出せないって。そう言ったよね?」
「……平気だろ」
「君は平気でも、僕らは平気じゃないんだよ。それで任務先で何かあれば、責任を負うのは検査書を作った南くんになるんだよ」
ズゥ老師って…確かアジア支部の、刀匠のご老人だよね?
神田の六幻は日本刀だから、大きく破損した時はズゥ老師に修理を任せることが多い。
今回はうちで修理できたけど…やっぱり刀匠である老師の確認は必要だったらしい。
「なんでそんなに嫌がるんだい」
「面倒臭い」
「…それだけ?」
いやいや。
じゃあ、なんですか。
夜中にわざわざ六幻を取りに来たのも、交換条件まで出して私に検査書作らせたのも、全部面倒だったから?
いやいや。
確かにアジア支部は此処から遠いから、検査も時間は掛かるだろうけど。
面倒臭がり過ぎです。
六幻に何か思いを馳せてたんだなぁと思った、私の気持ちを返して下さい。
「全く…とにかく罰として、神田くんが直接アジア支部に赴くように。これ今回の君の任務ね」
「は!?なんでわざわざ…っ」
「ズゥ老師の許可なく扱えないから。それができないと、本来の任務にも出られないしね。言い訳なし」
てきぱきと支持する室長に、今回ばかりは大賛成。
言い訳は何も利きそうにない。