第43章 兄と妹
そう、思ってたのに。
「ごっめーん☆それ僕が作った薬が原因みたい☆」
司令室に着くや否や。
ばちこん☆とウィンクかましながらペロリと舌を出してくる室長に、一瞬殺意が湧いたのは不可抗力だと思う。
うん。
「…どういう…まったくはなしがよめないんですけど…」
「俺も失念してた。室長の可能性は、全く考慮してなかったからな」
リナリー達と別れて司令室に赴けば、待っていたのはコムイ室長とリーバー班長の二人。
悪いと謝りながら、額に手を当てて溜息をつく班長。
いえ、班長は悪くありませんから。
「そもそも君達が僕を除け者にして、飲み会するのがいけないんだよ。憂さ晴らしに、お酒に薬混ぜたくもなるでしょ」
「なりません」
どんな憂さ晴らしですか、タチの悪い。
どうやら原因はあの飲み会にあったらしく、コムイ室長がお酒にこっそり薬を混ぜたらしい。
なのに泥酔しちゃったから、すっかり忘れてたとかなんとか。
…無責任にも程がある。
「恐らくその薬入りの酒を、南が飲んじまったんだろ。…頭痛がし始めたのは、いつ頃だ?」
「…そういえば…」
最後に、あの琥珀色のアルコールを摂取してからだったような…。
「でも、こうかがでるのにすごいじかんかかってません?」
「お酒の所為だね。薬の成分がアルコールに混じって、浸透に時間が掛かったんだよ」
成程。
って、感心してる場合じゃない。
「じゃあ、しつちょうがげどくざいつくってください。せいぶんもわかってるでしょう」
「うーん、そうしてあげたいんだけどねぇ…それだけ体内ブランクが起きてるなら、一度検査しないと。成分も変わってるかもしれない」
「けんさしたら、すぐつくってくれますか?」
「すぐにはできないかもしれないけど、ちゃんと作るよ」
…じゃあまだ、この姿でいないといけないんだ。
コムイ室長の言い分は、科学班として納得いくもの。
新薬を一つ作るのに色々と時間が掛かるのはわかってる。
体のことを考えるなら、慎重にいくべきだとも思う。
…でも早くこの視界の低い世界から脱したい。
コムイ室長を始め、周りは身長の高い人が多いから。
首が痛いんです。