第43章 兄と妹
「今日はね、リボンにしてみたの。どうかな?」
「…いいんじゃないかな」
どうかなって聞かれても。
ヒラヒラの明るいリボンがあちこち付いたチャイナ服を着せられて喜ぶのは、小さな子供だからだと思う。
「髪は三つ編みリボンにするね」
「うん」
楽しそうに髪の毛を弄るのを、リナリーの自由にさせたまま、もそもそと私はお茶碗の白いご飯を口にする。
最初は子供好きなんだってくらいにしか思ってなかったけど…これ、子供好きというか…単に着せ替え人形にされてるんじゃ…。
それから毎日の洋服は、リナリーが楽しそうに持ってくるチャイナ服となった。
ついでに髪型も、毎日弄られるようになった。
最初は嫌がったけど、あんまり悲しそうな顔をするものだから、もう好きにさせることにした。
美少女の悲しむ顔は、同性の私にもダメージだったんです。
仕方ない。
「すっかりリナリーの妹みたいですね」
「あ。おはよう」
「おはよう、アレン君」
「おはようございます」
お味噌汁を口にしていると、向かいに大量の朝ご飯持ち込んだアレンが見えた。
相変わらず、朝っぱらから胸焼けしそうな光景…。
「まだ体の方は、原因不明なんですか?」
「うん。リーバーはんちょうがてつやして、いろいろしらべてくれてるんだけど…ぜんぜんわからなくて」
あれから三日間。
ただでさえ忙しい職場なのに、更に私の問題まで背負ってくれたリーバー班長の目元の隈は、いつもより酷いものになっていた。
こんな子供の体じゃ、内勤でも多少なりとも支障がある。
皆の為に早く元に戻りたいし、だからこそ班長を止めることもできなくて。
色々と申し訳なく思う。
「はい、できた」
髪の毛からリナリーの手が離れる。
よくは見えないけど、手先器用なリナリーだから。
多分三つ編みされた髪には、可愛らしいリボンが付いてるんだろう。
「ありがとう、リナリー」
「どう致しまして」
可愛く仕上げても仕事で邪魔にならないよう、まとめるところはまとめてくれてる。
そんなリナリーに素直に礼を言えば、嬉しそうにふわんと微笑まれた。
…うん。
この笑顔を前にすれば、なんでも許せてしまえる気がする。