第42章 ロリータ・コンプレックス
すぐに服を用意してくれたリナリーに、助かったのは助かったんだが。
どこから用意するのかと思っていたら、自分の昔の服だったんだな。
だからどことなくチャイナ服みたいな…というか、チャイナ服なんだが。
どこからどう見ても。
「ねぇ南さん。髪の毛も編んでいいかな?お揃いの髪飾りがあるんだけど」
「え、いや…そこまでは、ちょっと…」
おどおどと応える南は、今は色鮮やかな明るい花柄の入ったチャイナ服に身を包んでいる。
普段あまり女性らしい格好を、職場でしていないせいか。
短いワンピースのようなチャイナ服は、女性らしく可憐に見えた。
「ちょっとだけだから。お願いっ」
両手を合わせて頼み込むリナリーの姿に、流石に断れなかったらしく渋々南は言うことを聞いた。
───結果。
「おい見ろよ。南が何処ぞの中国娘になってるぞ」
「うわー、可愛い」
「子供姿の方が、断然愛嬌あるんじゃねぇか?」
「だまってください」
わいわいと集まる科学班一同。
その中心には、不服だとばかりに眉間に皺寄せた南の姿。
編み込みしてアップにされた頭には、チャイナ服とお揃いの花飾りが飾られていた。
ジジの言う通り。
どこからどう見ても中国出身の少女に見える。
…確かに、愛嬌もある。
「やっぱり。南さんは日本人だから、チャイナ服も似合うと思ったの。ね、アレン君」
「うん、本当によく似合ってますよ。可愛い」
満足したのか、満面の笑みでリナリーが南を腕に閉じ込める。
指先で花飾りに触れて褒めるアレン。
そんな二人の率直な褒め言葉には、南も僅かに顔を赤くして大人しくなった。
…いかん。
あれ、どう見ても子供だぞ。
子供なのに…駄目だ。
どんな姿でも南は南だ、なんて思ってしまったから変に顔が熱くなる。
……ロリコンにも程があるだろ。
犯罪だぞ、流石に。
「なーなー、その姿で"お兄ちゃん"つってみ?な?」
「…タップ、それなんか犯罪」
「お前…ロリコンだったのか…」
「ち、違うっスよー!」
………違うからな。
俺、ロリコンじゃないからな。