第42章 ロリータ・コンプレックス
「これでよし」
最後の湿布を、小さな膝の青痣に貼る。
「ありがとうございます」
下げられる頭は、いつも見ていた頭より随分小さい。
リナリーが腕に抱いて連れてきた時は毛色的にリナリーの血縁者か何かかと思ったが、南だと聞いて驚いた。
よくよく見れば、その目鼻立ちは大人の南と似通っている。
…子供の南は、こんな顔してたんだな…。
「リーバーはんちょう?」
じっと見てしまっていたのか、怪訝そうに見てくる幼い目と合う。
その姿は、昨日着ていた南のシャツ一枚だけ。
…いくら子供の姿だからって、やっぱりこの姿は駄目だよな。
「リナリーが服持ってくるまで、これ着てろ」
「え?…あ、はい」
南の白衣を上から羽織らせる。
大人しく従うところ、南も多少は気にしてたらしい。
「それと。軽い打ち身だけど、放っておいたら痣になるからな。ちゃんと気を付けろよ」
ぽん、と頭に手を乗せれば、簡単に覆える程に頭は小さい。
大人の南でも充分、俺からすれば小さな体をしてたけど…子供だと尚更だな。
力を入れたら簡単に壊れてしまいそうで、少し構えてしまう。
「…はい」
頭を撫でれば、気恥ずかしそうに南の視線が彷徨って、それから大人しく引き下がる。
それは以前の南となんら変わりない仕草。
こうも見た目は変わっても、やはり南なんだと実感すると不思議と安心した。
どんなに子供の姿になったって、南は南だ。
…そう、どんなに。
「やっぱり!ぴったりねっ」
……どんなに、子供の姿であったって。
「リナリー、その服どうしたんだ…?」
「兄さんが勝手にコレクションしてた、私の子供服。タンスに隠してたのを拝借してきたの」
…成程。
あのシスコン、そんなことまでしてたのか。
相変わらず悪趣味というか…リナリーに嫌われるぞ、それ。