第42章 ロリータ・コンプレックス
「もう、わたしであそぶのやめてください。みんな、しごともどって」
「嫌だわー。こんな冷めた目で仕事とか言う女の子。嫌だわー」
「折角、口調は可愛いのに…南、女は愛嬌だぞ。可愛いこと言ってみろ」
「………すいへーりーべーぼくのふね」
「うわ!元素記号言い出したよ、この子!」
「舌足らずなとこが逆になんか怖い!」
真顔で周期表を口にする南を、周りの連中が大袈裟なまでに騒ぎ立てる。
…なんだかんだ南も一緒になって遊んでるんじゃないか、あれ。
「…やれやれ、」
そんな光景に思わず笑ってしまう。
科学班の皆が好き放題言って、南がツッコむ姿はよく見てきたけど。
なんだかんだ、ああして仲良しなんだよな。
あいつら。
「はいはい。お楽しみ中悪いが、本当に仕事に戻れよ」
まだ見ていたかった気もするが、そこに歯止めをかけるのが俺の役目でもある。
それに。
「約一名、本気でキレ兼ねないからな」
苦笑混じりに指差した先には、研究室の隅の壁に凭れて腕組みしている神田の姿。
眉間にくっきり皺寄せて、その額には青筋。
早く検査書を作れと言わんばかりのその表情に、流石に南も口を閉じて顔を青くした。
ま、あれは怖いよな。