第41章 交換条件
「にしても、本当に南なんだな…」
向かい合わせに抱き直される。
じぃっと私を見てから、驚いたように静かに息をつくリーバー班長。
「本当にって…南さんがこうなったのは、科学班の薬の所為じゃないんですか?」
一緒についてきてくれたアレンの言葉は、私も問い掛けたいことだった。
「確かにうちに体が子供になる薬はあるが…ここまで小さくなったっけな…」
考えるように、まじまじと班長の目が私を観察する。
…近い。
真剣な表情が、凄く近い。
お、下ろしてもらえないのかな。
「なんだ、南。薬品を誤飲するなんて、科学班失格だぞー」
「っそんな、のんだおぼえないんですけど…」
呆れたように言うマービンさんに、慌てて首を横に振る。
だって本当にそれらしいものを飲んだ覚えはなかったから。
「誰かあの薬を最近扱った奴いるか?」
周りを見渡して言うリーバー班長に、皆は首を横に振った。
ということは、その薬じゃないってこと…?
「まいったな。原因がわからなけりゃ、解毒剤も安易には作れないし…」
確かに。
原因となる薬の情報がないと、適当に解毒剤を作っても悪化し兼ねない。
どうしよう。
「じゃあ、どうするの?班長」
「そうだな…とりあえず、南を連れて来てくれてありがとう。後は俺達でどうにか、対策を考えてみるから」
心配そうに問いかけてくれるリナリーに、班長は安心させるように笑いかける。
まぁ多分、一生このままの姿じゃないだろうし。
…多分。
化学薬品のエキスパートが、此処には沢山いるんだから。
大丈夫、大丈夫。
「───おい、」
そこに静かに響く低い声。
見れば鋭い眼孔の持ち主と目が合った。
その目は何も言わずとも"わかってるな"と語っていた。